ソーシャル・メディアの台頭により、消費者の信用は「企業から消費者」の縦の関係から「消費者から消費者」の横の関係に存在するようになり、企業よりも他の消費者を信頼する傾向にあります。実際、消費者の90%が企業が打ち出す広告よりも、他の消費者による口コミや推奨を信頼する事が多く、また70%がオンライン上に投稿されるレビューを信頼しているといった調査結果があります。
この原因の1つとして、マーケティングにおいて「説得の技」時には「ごまかす様なニュアンス」を使ってまで製品、サービスを売り込む「ハード・セリング」にあり、また今日の消費者はそれらの事に気づき、企業が行うマーケティングそのものを「売り込み」と同一視している事にあると判断されます。
実際に、今でも売上を上げるためだけに、誇張された広告や紛らわしい表現のキャッチコピーなどが蔓延しています。この様な状況の中、消費者の信頼を獲得しさらに企業が成功していくためには、共創、コミュニティ化、キャラクターが重要とされます。
3.0の構成要素「協働」「文化」「スピリチュアル」
この3つは、3.0の構成要素である「協働マーケティング」「文化マーケティング」「スピリチュアル・マーケティング」を行っていくための基盤、コンセプトとなります。
マーケティングの構成要素 | これまでのマーケティングのコンセプト | 3.0ののマーケティング・コンセプト |
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製品管理 | 4P | 共創 |
顧客管理 | S・T・P | コミュニティ化 |
ブランド管理 | ブランド構築 | キャラクター構築 |
共創
「共創」とは、アメリカの経営学者C・Kプラハラードの造語です。また彼は、
「製品にとって最大の価値を生み出すのは、個々の消費者の経験の集積で、個々の消費者は製品を経験するとき、その経験を自分自身のニーズや欲求に従ってカスタムかする」
と述べています。つまり企業としての共創とは、カスタム化できる一般的な製品である「プラットフォーム(基盤)」を生み出し、ネットワーク内の個々の消費者に、各自のニーズや欲求に合うようにカスタマイズしてもらい、そして消費者にフィードバックをもらい、最終的にカスタム化されたモノ、アイディアを取り込むことでプラットフォームをより価値の高いものにするという事です。
消費者同士のネットワークの中で行われる共創を、企業がフィードバックをもらうことで「企業と消費者の共創」が生まれるという事です。
コミュニティ化
コミュニティ化という概念は、マーケティングにおける、民族主義の概念と密接に関連するものになり、消費者は企業と繋がるのではなく、他の消費者と繋がることを望む傾向が強いとされます。また消費者のコミュニティには3つの形態存在するとされます。
*民族主義(エスニシズム、エスニズム)は、自らの民族を政治・経済・文化などの主体と考え、 価値観の至上とする思想や運動で、エスニック・ナショナリズムとも言われます
①プール型
これは、コミュニティの消費者は、同一の価値を共有しているが必ずしも互いに交流するとは限らず、消費者を結び付けているのはブランドに対する信念と強い愛着になります。
②ウェブ型
ソーシャル・メディア・コミュニティなどで、消費者同士が交流を持ち、結びつきを支えているのはメンバー内におけるワン・トゥー・ワン・リレーションシップになります。
③ハブ型
このコミュニティの消費者は、強靭な人物の周りに引き寄せられ忠実なファン層を形成します。
企業はコミュニティに役立つ活動に参加し、消費者が互いに繋がる手助けをする必要があり、また成功するためにはこの様なコミュニティの支持が不可欠だと言う事です。
キャラクターの構成
まず、ここで言うキャラクターとは、マスコットキャラクターやイメージキャラクターのような「具現的なモノ」ではなく企業の一貫した理念や行動といった、消費者のイメージに与える「一貫したアイデンティティを持つキャラクター」という事です。
*アイデンティティとは、自己同一性とも言われますが、 「自分は何者であり、何をなすべきかという個人の心の中に保持される概念」とされます。
そのキャラクターを築き自己を証明することで、消費者に対し共感や信用を築いていくという事になります。
まとめ
B・J パイン、J・H・ギルモアは、今日の消費者は、「ブランド」を見たとき、それが本物かあるいは偽物かを即座に判断を下すと述べています。実際「怪しい」と思うものや、誇張すぎるものに対し、調べたり、口コミを見たりなどし、疑念が消えなければ購入も信用もしないのではないかと思います。
もしも、広告やPRなどで「本物」ではなく「本物に見える」のような事をしていては信用を即座に失ってしまい、また、そのイメージを払拭することは難しくなります。ソーシャル・メディア時代において、消費者のネットワークの繋がりがある世界で信用を失うことは、潜在的購買者のネットワークそのものも失ってしまいます。
なので、企業は本物と判断してもらえるよう、一貫した主張とその主張に背かない経験価値を提供していく必要があり、またそれによる地位の確立が「真の差別化」になるという事です。